読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

地域づくりブログ

地域を愛し、誇りを持って働き、暮らし、輝いている地域人(ちいきびと)の物語を紡ぎたい。

筑後の酒蔵をめぐる旅

筑後の酒蔵を一緒に見て回りませんか?」というお誘いを九州芸文館の安西さんからいただいた。事務所の地域ゼミ(地域づくりに関わる人を招いたサロン)でもお世話になっているし、酒好きな私が断る理由がない。

今回の視察は、筑後七国の酒文化を活かした着地型観光商品をつくるために、自治体や観光協会の関係者と現地をみようという主旨だった。簡単にいえば商材の目利きである。1日で矢部川流域の酒蔵を11箇所も巡るという強行日程だったがどの蔵も個性的で面白い。時間が限られていたので、詳しい話は聞けなかったが、特徴的だった3蔵を紹介したいと思う。

◯年中生産を目指す「喜多屋」

最初に訪れたのは、2013年のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で最優秀賞を取り、すっかり有名になった喜多屋である。入口を入ると、2mはありそうな杉玉が出迎えてくれる。もともと「白花」という屋号だったそうで、煙突にもうっすらとその痕跡が残っている。

蔵の中に入ると、蔵人がちょうど甑(こしき)で蒸した蒸米を麹室(こうじむろ)に入れる前に放冷している作業に出くわした。11月上旬なのにずいぶん早い仕込みだなと思ったのだが、その理由はすぐに分かった。

喜多屋では温度管理の行えるサーマルタンクなどの最新設備を導入している。夏でも真冬と同じ温度を維持できるわけだ。搾りはどうしているのかと思ったら、巨大な冷蔵庫の中に機械があった。これによってほぼ年中仕込みができるそうだ。大吟醸のタンクを見せてもらったが、中から吟醸香が香ってくる。朝一番から早くもお酒が飲みたくなった。現在の温度管理は、IWCを受賞したタンクの温度管理がベースとなっているそうだ。手間と人手をかける部分と先端技術が融合した現代の酒造りを見させていただいた。

f:id:hmasa70:20141110092656j:plain

入口にIWCチャンピオン

f:id:hmasa70:20141110095115j:plain

温度管理が行えるサーマルタンク。IWC受賞時の温度管理が目安だそうだ

f:id:hmasa70:20141110094814j:plain華やかな吟醸香が香ってくる

◯昔ながらの仕込み「玉水酒造」

午後に訪れたみやま市の玉水酒造は昔ながらの酒蔵である。喜多屋と違って、仕込みの準備もまだ始まっていない。蔵人は山川のみかん農家で、11月はみかんの収穫に追われているそうだ。仕込みは1月~3月の寒仕込みである。

お酒につかうお米も地元であれば、消費もほとんど地元である。古代の品種である神力という米で仕込んだ酒(その名前も神力)を出している。ラベルも自作だそうだ。3月の蔵開きには近くの小学校のグラウンドが満車になるほど人が集まり、レジャーシートや弁当を持参してくるらしい。まさに地元に愛されている地酒である。 

f:id:hmasa70:20141110141626j:plain

玉水酒造の麹室(こうじむろ)。最近は塩麹などのブームで、麹だけつくることもあるそうだ

◯新たなチャレンジを続ける「若波酒造」

日が暮れる直前に訪れたのは、大川市にある若波酒造である。明日から仕込みを始めるとあって、蔵の道具の手入れがなされ、ほのかに蒸気が立ち昇っていた。蔵を紹介していただいたのは、8 代目杜氏の今村さん。女性杜氏であることにも驚いたが、蔵の中がまっすぐに見渡せる動線とフラットな床だったことにも驚いた。先代がつくったバリアフリー酒蔵だ。この動線のおかげで、労力もかなり削減できているそうだ。蒸米も床で放冷するのではなく、滑車のついた台に載せて麹室までまっすぐに運ぶことができる。その台には蒸米を早く冷やすための穴まであいている。さすが家具のまち大川だと思った。あまおうやカシスのリキュール、酒造りの道具をインテリアとした『利き酒処』等、 女性らしい取り組みも積極的に行われていた。

f:id:hmasa70:20141110165419j:plain

大正11年に今村本家酒造の分家として創業した若波酒造。蔵の傍を流れる筑後川の若々しい波の姿から銘名されたそう

f:id:hmasa70:20141110170800j:plain

若波酒造の蒸米を放冷して運ぶための台。無数の穴と滑車がついている。家具のまち大川ならではの道具

筑後の酒のファンを育てよう

今回、蔵を巡る中で、筑後の酒蔵を集めたパンフレットや展示会等も企画されているという話を聞いた。地元で盛り上がるのは非常にいいことだなと思う。私たちみたいな外部の人間に何がお手伝いできるだろうと考えたときに、思いつくのはやはりファンづくりだと思う。幸い日本酒は毎年新酒が出るので、気に入ってもらえればリピーターになってくれそうだ。ファンを集めるための母体として、まず研究会をつくってはどうかと提案したところ、さっそく準備会をやろうという話になった。左党が多いので話は早い。飲むことはもちろんのこと、酒米杜氏など、面白い話はたくさん眠っていそう だ。研究成果は随時紹介していきたいと思う。