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地域づくりブログ

地域を愛し、誇りを持って働き、暮らし、輝いている地域人(ちいきびと)の物語を紡ぎたい。

タクシー事業者が便利屋事業を始めました。-太陽交通の生活支援系ビジネスの取り組み-

地域づくり 地域交通

 「高齢者の一人暮らしが多くなって、今後は電球の取替などのニーズは増えるよね。ビジネスにならないかな?」という相談を糸島のある事業者から受けた。
 たしかに高齢者の一人暮らしが増えると、家族で行っていた何気ないことが自分でできなくなる。生活支援系サービスのニーズは増えそうである。ただ、事業として成り立つほどの需要があるのかは、正直わからなかった。
 そのときに思い出したのが、太陽交通が始めた便利屋事業である。みやこ町の乗合タクシー事業を企画立案していた際に、タクシー乗務員がスーパーの荷物運びなどをしていると聞いていたが具体的な話は知らなかった。高齢者の生活支援サービスで事業は成り立つのかどうか、実際の状況を知りたいと思ったので、さっそく一緒に話を伺いに行った。

◯乗務員の売上を増やすために始めた事業

 太陽交通は、行橋市を中心に京築地域一円でタクシー事業やバス事業を展開している交通事業者である。観光事業や不動産事業なども多角的に行っている。便利屋事業に取り組みはじめたのは平成22年11月とごく最近である。

 「乗務員の労賃をなんとか増やしてあげたいと思って始めたんですわ」と、対応していただいた担当の屋根内さんはそう話始めた。
 「田舎では、自家用車を4台保有していることも当たり前の状況です。タクシー需要が頭打ちの中、乗務員の売上を少しでも底上げをしてあげたいという思いがありました」
 タクシーは朝夕の利用が多く、昼間は少ないというムラがある。利用の少ない昼間の待機時間の3~4時間をなんとか活用できないかと考えたそうである。実は便利屋事業を始める前に、太陽交通ではタクシー利用者に対しスーパーの荷物運びなどを手伝う「おたすけ便」というサービスを行っていた。この取り組みの評判はよく、利用者もかなり伸びそうだという感触を得たことから、本格的に便利屋事業を開始した。
 「事業を始める前に、まず最初に全乗務員に持っている資格や免許を挙げさせました。乗務員は前職がシェフだったり、大工だったりと多種多様なんです。大抵のことは自分たちでできるというのは強みです」
 「どんな内容でも、とにかく相談を受ける。断らないことで相談がくる。できないことは、付き合いのある専門業者に手伝ってもらえばいいという考えで始めました」
 営業はホームページとタクシー内の広告ぐらいでスタートしたものの、仕事の丁寧さが口コミなどで広まり、今では月の売上が100万円を超えるほどにまで成長している。
 「一番利用が多いのは草刈りと引っ越しの片付けですね。『老人ホームに入居するのでマンションを片付けてほしい』といった相談が入ります」と言われる様に、春先には引っ越し、夏場と冬場は草刈りがメイン業務となっている。利用者は都市部よりも田舎の方が多いそうだ。
 引っ越し業者と競合しないのか気になって聞いてみると、「家財道具を処分してほしいという要望が多いのですが、タンス一つを運搬するにも産業廃棄物収集運搬業の許可がいるんです。実はこれが一番苦労しました」と言われた。依頼の内容は、引っ越しではなく、家財道具の処分のため、引っ越し業者と競合はしないそうである。しかし、家1軒の解体費用は解体4割、廃棄物処理6割と言われるくらい処理費用がかかるらしい。太陽交通でも当初、処理費用を見込んでおらず、だいぶ赤字を出したそうである。 現在は産業廃棄物収集運搬業の許可も取り、最終処分は産廃業者と組んで行っている。草刈りにしても、刈った草を処分する場合には、別途処理費用をいただいているそうだ。

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夏は草刈りの繁忙期。現場に向かう便利屋さん

◯地元の信頼と丁寧な仕事がウリ

 費用の考え方としては、「1人あたり1時間2000円から2500円の労賃をいただいています。実際には担当者が現地をみて見積もりを取るので、ホームページの価格はあくまで概算ですね」とのこと。ホームページをみると2時間半の除草が2名で25,000円となかなかの値段であるが、需要は伸びているらしい。
 「塀の色塗りや木の剪定等はプロではないですが、丁寧にきっちり仕事をしてくれると喜ばれています」といわれるように、プロに頼むほどではないが、安かろう悪かろうでは困るというニッチなニーズをうまく掴んでいるようだ。
 当初は、乗務員の待機時間で作業を行っていたものの、需要が増えてきたことや草刈りの拘束時間が長いことなどから、現在は専門職員3人体制で事業を行っている。1人は元乗務員だが、残りの2人は別途雇用している。体力仕事が多いので、50代以下の男性を2人雇用しているそうだ。利用者にとっては、知らない人を家に入れるのは抵抗があると思うのだが、「網戸の修理などは女性や年寄りには難しいので相談が来ますね。ご婦人からゴミの片付けをしてほしいという依頼もあります。『太陽交通』という信頼のおかげですね」とのこと。本業での信頼が便利屋事業にも活かされている。

便利屋件数の推移

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◯糸島での事業展開

 正直にいうと話を伺うまでは、便利屋単体では事業は成り立たないのではないかと思っていた。現在もまだ事務職などの間接費用を生み出すほどの規模にはなっていないものの、犬の散歩、雨漏りの管理などの相談もあるらしく、まだまだ需要は伸びそうである。内需型の事業なので、人口規模での限界がいずれくると思うのだが、ノウハウなどを教えることも需要がありそうである。生活支援系の地域ビジネスはまだまだ眠っていそうだ。
 実際に糸島の事業者は、地元の知名度はもちろんのこと、産業廃棄物収集運搬業の資格もあり、草刈りも日常的に行っているので、すぐにでも事業が始められるのではないかと思う。ただ、接客業を行っていないので、サービスの質やクレームへの対応ができるかが心配らしい。質問の内容も社員教育や住宅に上がる際のトラブル防止のノウハウ(例えば、指示のない部屋には入らない、トイレを使わない、不要な滞在をしない、必ず2人体制にする)等、主にリスク管理の話を聞いていたのが印象的だった。
 事業を始めるにあたり、いきなり便利屋事業にとりかかるのではなく、「おたすけ便」といった形で、小さく事業を始めて、需要を把握したり、ノウハウを蓄積したりする方法も非常に参考になると思った。需要が少なければ撤退もできるし、投資も抑えられる。地域ビジネスの可能性はトライアンドエラーを繰り返さないと見えてこないように思う。糸島での便利屋事業をどのように展開するかはこれからだが、いずれ取り組みの状況を報告できればと思う。