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地域づくりブログ

地域を愛し、誇りを持って働き、暮らし、輝いている地域人(ちいきびと)の物語を紡ぎたい。

病院も地域づくりの担い手に。 -NPO法人しらかわの会「サロン田崎」の取り組み-

地域づくり 空家

  大牟田市の上白川地区というところにサロン田崎という地域のたまり場があります。ここには毎週木曜日の午前中、周辺に住む地域の方々が集まり、おしゃべりや食事を楽しんでいます。外からみると、一般の住宅と変わりません。それもそのはず、ここは空き家だった住宅を改修してできたサロンだからです。

 伺った日は、ちょうど餃子を作っているところでした。毎月最後の木曜日は食事会なのだそうです。ふとみると高齢者の中に混じって、若い女性が一人います。参加者に丁寧に話しかけている姿をみた第一印象は看護婦さんでした。挨拶を交わすと、このサロンの運営を行っているNPO法人しらかわの会の事務局の人でした。いただいた名刺の裏をみると、白川病院と書いてあります。小規模多機能型居宅介護に併設してある地域交流施設と兼務されているのだそうです。あながち私の第一印象は間違っていなかったのですが、むしろ、なぜ病院がサロンに関わっているのかが気になります。餃子づくりの合間の時間を借りて、お話を伺わせていただきました。

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空き家を活用したサロン田崎

◯「家に帰りたい」という患者の声をきっかけに地域づくりへ

 「白川病院に入ると、二度と外は出てこられないと地元の人からは言われていました。でも患者さんからは、家に戻りたいという声をよく聞くんです」

 「でも、1人暮らしだったり、サポートしてくれる家族がいないと、病院や行政サービスを頼らざるを得ません。その間に『地域』のサポートが得られれば、家に戻れるんじゃないか。そのためには病院も地域づくりに関わって行く必要があるんじゃないかという思いからこのサロンが始まったと聞いています」と事務局の岡さんは、経緯を話してくれました。病院の方からいきなり「二度と外には出られない」といわれたのには驚きましたが、「地域づくり」という言葉が出てきたのも驚きでした。

 サロンもすぐに始まったわけではなく、最初は認知症の人を見守る地域の意識を高めようと始まった徘徊模擬訓練がきっかけだったそうです。訓練では徘徊者に対して地域住民からの声かけは少なく、住民間の関係が希薄なことがわかりました。それならもっと隣近所で気軽に声かけできるような関係づくり、場づくりをしようと生まれたのがサロンでした。

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お話を伺った事務局の岡さん

◯6つのサロンを運営するNPOしらかわの会

 サロンを運営する組織としてNPO法人しらかわの会がH21年に設立されます。このNPOではサロン田崎以外にも5つのサロンを運営しているそうです。

 空き家を活用しているのはサロン田崎だけですが、他では小学校の体育館の一室や自治会の集会所を借りたり、農園を借りたサロンもあります。サロン田崎の近くにも自治会の集会所があるのですが、大牟田市では自治会の加入率が低く、会員外の住民は参加しにくいことや集会場所が2階にあるため、高齢者が使いにくいということもあるようです。

 サロン田崎がなぜ空き家活用になったのかは、家主だったお母さんが在命のころ、家が空いたら地域のために使ってほしいと話していて、その意を受けた息子さんから申し出があったのだそうです。

◯やることをなにも決めていないサロン

 「サロンには、毎回テーマはあるんですか?」と聞いたところ、「このサロンはやることを全く決めていないサロンなんです。来た人と一緒にすることを決めています。はじめからすることを決めていると、テーマによっては『今回は参加しない』という人も出てきてしまいます。誰でも気軽に参加できるようにこのような方法で行っています」とのこと。

 アットホームな雰囲気が生まれるかわりに、単なるおしゃべりで終わることもあるとか。交流が目的なのでいいのだそうですが、運営方法はまだまだ模索しているそうです。

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最終木曜日はみんなで料理をするのだそう。この日は餃子でした。

◯生活者の視点からの地域づくり

 大牟田市には「住よかネット」という官民連携で空き家の有効活用を推進する組織があります。サロン田崎は、この空き家活用の最初のモデルでもあります。実は今回の視察もこの建物の改修や仲介などを行っている社会福祉協議会に紹介していただきました。

 建物をよくみると、一部の床が張り替えられていたりします。地元の大工さんに監修してもらいながら、有明高専の学生さんが施工したそうです。できるだけお金がかからないよう工夫されています。空き家になってほとんど間がなかったので、雨漏りなどの不具合もなかったそうです。空き家である期間は短いほど、改修などの追加投資が少なくて済むなと改めて感じました。

 仏壇なども残っていて、親族方々が法事の際にも利用しているそうです。リノベーションもいいですが、建物に元の居住者の面影が残っていると、親族の人たちも利用できます。これから多くの地域で人口が減少していく中、地域外から新たな居住者を招くことができるのはほんの僅かの場所だけだと思います。もっと今いる地域の人のための空き家活用を検討すべきだと思いました。不勉強だったのですが、地域包括ケアシステムや医療ソーシャルワーカーなど、医療・福祉分野でも地域で認知症や要介護者を支えるための地域づくりの動きが始まっています。これからはこうした生活者の視点から地域づくりとの連携にも取り組んでいきたいと思います。

 

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学生さんが張り替えた床とメインルーム。椅子やテーブルも余ったものをもらってきたそうです。