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地域づくりブログ

地域を愛し、誇りを持って働き、暮らし、輝いている地域人(ちいきびと)の物語を紡ぎたい。

旧土井良家住宅の空き家再生プロジェクトその2(開発許可編)

-市街化調整区域の開発許可申請顛末記-

 タイトルから「市街化調整区域(以下、調整区域)」と「開発許可」という耳慣れない言葉が並んでいます。これから地域づくりで空き家活用という話も増えてくると思いますが、空き家がたまたま調整区域に存在することで、開発許可が下りずに地域づくりが進まないことも今後起きそうです。旧土井良丈文家住宅の用途変更を行う際、そのことを強く感じたので、どのような問題が生じそうか、その顛末を残したいと思います。

◯そもそも調整区域ってなんだ?

 都市計画を知らない人にとっては調整区域といっても何のことか、さっぱりわからないと思います。簡単にいうと、都市部は「開発を進める市街化区域」と「開発を抑制する調整区域」の2つに分けられています。
 開発が進む恐れのない小規模都市や農村地域では都市計画区域そのものがなかったり、あっても調整区域はないケースもあります。都市の周辺で無秩序な開発が進む恐れのあるところを調整区域にして、開発を行う際は事前審査にあたる「開発許可」という制度で土地利用をコントロールしています。
 このルールは人口の増加期には開発抑制として機能したわけですが、縮退期になると足かせになるケースも生じてしまいます。糸島市内の同じような農漁村でも、調整区域とそうでないところで、空き家活用の進み方に差があったりします。今回、私が関わった旧土井良家住宅は調整区域にあるため、改修もほどんど行わないのに、住宅を集会所に用途変更するために、開発許可が必要になりました。

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糸島市の都市計画と旧土井良家住宅の位置

◯都市計画を知っていても不安な開発許可の手続き

 調整区域では開発許可が必要なことは知っていましたが、恥ずかしながら、どんな手続が必要なのかはまったく知りません。福岡県(以下、県)の都市計画課に相談にいくと、「都市計画法に基づく開発行為等の審査基準」なる分厚い書類を見せられました。
 そもそも住宅を住宅として使うのであれば、開発許可は不要です(細かくはいろいろあるのですが、ここでは省略します)。また、昔の用途と同一用途(産業分類の中分類が同じ)であれば、開発許可は不要なんだそうです。相当以前の用途を調べ上げ、証拠があれば、開発許可を行わずに用途を変えることもできるそうです。
 でも今回は住宅から集会所なので、同一用途になりません。調整区域では基本的に住宅や日常生活のための店舗など以外は許可されません。ただ別途に、「開発審査会の議を経て認められる開発行為」というのがあり、集会所などの準公共的な施設であれば、許可が下りるかもという話でした。
 都市計画法や開発許可基準などの話は、一般の人には高いハードルです。都市計画についてはある程度の知識を持っていても、建築に関する知識が乏しく、途中で話がわからなくなります。外部の協力者を得ずに、申請を完了できるか、相当不安になりながら、県庁を後にしました。

◯家主の協力が不可欠な手続き申請

 さて、開発審査会の議を経るためには、提出書類を作成しないといけません。土地の造成工事をするわけでもないから、大したことはないだろうと思っていたら、大間違いでした。

 建築物の配置図や平面図、求積図は、当然必要なので弊社の山田(一級建築士)に起こしてもらったのですが、建築行為等同意書なるものには、家主の実印と印鑑証明が必要と書いてあります。登記簿をみると家主の父親の名義のままで、相続をしていません。死んだ人では証明にならないので、慌てて家主のご家族に相談したのですが、家族仲が悪かったりすると、相続が進まないケースもあります。相続の長期化を心配したのですが、幸いにも家主の娘さんが熱心に動いてくださり、2ヶ月ぐらいで相続をしてもらいました。
 今回はたまたまスムーズに手続きが運びましたが、借りる側だけでなく、家主の協力も必要であること、また相続の確認は事前に行っておかないと事業の中止に追い込まれかねないことを痛感しました。

◯市や区の協力が必要な開発許可

 申請書類については、糸島市の都市計画課が窓口なのですが、図面作成に慣れていないので道路幅や排水経路など、2、3度実測し直しさせられました。また、延床面積が100㎡を超えていたため、建築関係については箱崎にある県土整備事務所で別途協議しにいく必要があったりと、縦割り行政の弊害も実感しました。

 また、糸島市長や岐志浜区長の名義で、なぜ新たな集会所が必要なのか、他の用途への転用の危険性はないという旨の書面の提出も求められました。この書類を求められる背景として、宿泊施設などへの流用を県の都市計画課がとても危惧していることが伺えたのですが、同時に岐志浜区や糸島市にも責任が生じてしまうので、変なことはできないとも感じました。ただ、一般の人が調整区域で用途変更を申請する場合には、この書面の作成は厳しい条件になるとも感じました。

 しかし、もっと困ったのは実は合併浄化槽の設置問題です。土井良家住宅のある岐志浜地区は下水道が整備されていないので、生活雑排水は雨水と一緒に流しています。合併浄化槽にしないと許可が下りないといわれたときには顔が青くなりました。そもそも集会所という公共性の高い用途変更なので、収入見込みがほとんどなく、設置費用を捻出できません。家主や運営会議のメンバーでも出資は厳しい状況でした。話が暗礁に乗り上げていたとき、空き家活用の助成をしている県の住宅計画課が都市計画課と協議してくれ、合併浄化槽がなくとも許可をもらうことができました。後で聞いた話ですが、糸島市も岐志浜地区の現状で問題はなく地域性を考慮してほしいと応援してくれていたそうです。住宅計画課と糸島市の協力がなければ、ここでも挫折していた可能性は高かったと思います。

 

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旧土井良家の平面図とゾーニング

◯都市計画が抱える問題点

 今回、開発許可の申請は慣れていないこともあり、かなり時間をとられました。業務として受けるならば20~30万円は貰わないと赤字になるでしょうか。しかし、正直にいえば、建物はほとんど手を入れないのに、書類作成だけの費用としてはもったいなく感じます。平面図などは改修に使えますが他は使えません。できれば他の費用などに回したいのが本音です。
 大規模な開発であれば、微々たる経費かもしれませんが、一個人の空き家を活用するための費用としては高額です。現地確認でわかることもかなり多く、用途変更の責任を市長や区長に求めるのであれば、いっそのこと、既存建築物の用途変更の権限は市町村に移管すればいいのにと思いました。
 また、都市計画自体が制度疲労を起こしているとも思いました。都市計画は、そもそも都市を中心にした法体系なので、調整区域の集落や地域をどう維持するかという発想がありません。地域住民との接点を持たない県が窓口の場合には、一地域への関心はなおさら薄くなります。
 しかし、都市計画の用途などがないところでは建物が自由に使えて、調整区域では何もできないという問題が生じています。また調整区域内でも都市計画のルールを知らずに用途変更した店舗は特にお咎めがなかったり、まじめに従う人が不利益を被るケースもみられます。法令順守は当然のことですが、権限の移譲や手続きの簡素化も進めてもらいたいと思いました。
 県の住宅計画課に聞いたところ、調整区域の用途変更は今回初めてのケースだったらしく、今後の用途変更申請の一つの目安になるそうです。調整区域の空き家の利用がもっと進みやすくなるのであればいいなと願うばかりです。私に協力できることがあれば、お手伝いしますので、気軽に相談してください。