地域づくりブログ

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福岡県立大生と添田町の空き家を見て回る

 添田町副町長の小河さんとは、筑後市の九州芸文館の運営方法について一緒に調査をさせていただいたときからのお付き合い。福岡県から添田町に赴任されたので、空き家関連の調査の際、挨拶に伺いました。添田町も空き家が多く、その利用に悩んでいます。雑談の中で、「福岡県立大学(以下、県大)が近いので、学生に添田町に住んでもらって、地域づくりに協力してもらえないだろうか」という話が出ました。

 県大の先生たちとは一緒に仕事した縁もあるので、「実際に学生に空き家を見てもらって話を聞いた方が早いですよ」と伝えると、ぜひやろうという話になりました。さっそく県大の森山先生に相談して学生を紹介してもらい、公共社会学科の3年生4人に添田町に来てもらいました。

◯暫定利用も考えたい旧醤油屋

 今回は一般住宅の空き家ではなく、添田町が所有(予定含む)する空き物件3軒を見て回りました。最初は醤油屋だった中村家住宅。20年数年前に廃業し、近年、町の指定文化財として買い取ったそうです。中に入ると学生たちは「ジブリみたい、サマーウォーズみたい」とはしゃいでいます。私もアニメ好きなので、かろうじて話についていけます。

 明治時代の建物で部屋数が多く、中庭もあります。敷地の奥には醸造場があり、木樽や撥ね木なども残っていました。ただ20年以上も放置されているため、雨漏りするなど劣化がかなり進んでいます。学生たちも住むには不便そうで、外国人向けのゲストハウスの方が相性が良さそうだという感想でした。添田町も利用してくれる人がいれば改修したいそうなのですが、管理費や運営費までは賄えないようです。文化財クラスの立派な建物が朽ちつつある中で、放置せざるを得ないのはとても心苦しく感じます。壊してしまうのは簡単ですが、地域の記憶も失われてしまいます。周辺住民の方々と片付けをしたり、身近な改修を行い、綺麗な部屋だけでも部分的に暫定利用するなど、自分たちができる範囲のアクションを起こせないかなと思いました。

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中村家住宅の説明を受ける学生たち

f:id:hmasa70:20160227133625j:plain木樽や撥木の残る醸造

◯アクセスではなく周囲に友人がいないことがネック

 2軒目は、築10年程度の平屋住宅です。戸建の住宅団地の真ん中にワンルーム程度の小さな住宅が不釣合いに建っていました。元の家主は大阪在住で、旧家屋の解体後、いずれ住むかもしれないと思い、建てたそうなのですが、結局住むことなく町に寄付している手続き中なのだとか。

 学生たちは、建物の新しさやキッチンの広さなどに興味を示していました。町の中心部からは離れているのですが、車で大学まで20分ぐらいなので住むにはまったく問題ないとのこと。県立大学には学生専用駐車場があるくらい、県下でも学生の自動車保有率が高いらしく、家賃が1万くらいなら、2年間で車1台買えるくらいの貯蓄ができます。買い物は大学近くのスーパーでできるし、ネット環境があれば休講の確認なども自宅でできるので、居住の可能性はありそうです。ただ、周囲に友達や知り合いがおらず、住宅団地の中に学生1人で暮らすのは、環境として厳しいかもという意見もありました。

◯旧警察官舎は男子寮に最適

 3軒目の建物は、旧警察官舎だった住宅団地です。3DKの部屋は綺麗な状態で、空き家という感じはしません。なんだか賃貸物件を案内する不動産屋になった気分です。12部屋中1部屋は居住者がいますが、ほとんど1棟丸々空いている状態です。それを聞いた学生たちは「男子学生寮にできるやん!」と歓声をあげていました。県立大学には現在、女子寮しかなく、男子は一般の賃貸住宅に暮らすしかないそうです。女子寮も光熱費込みで1人1万2千円と破格なのですが、5畳の部屋を2人でシェアしなければならず、間仕切りすらない状況なのだそう。先ほどの物件の近所に友人がいないという問題も解消されますし、女子寮と同等額であれば、距離があっても需要はかなりありそうだという話でした。

 唯一の問題は交通面ですが、家賃が安ければ車や原付バイクも購入できます。10分ぐらい歩けばJR添田駅もあります。ただ、できればタクシーと年間契約するなど、通学に使える足を確保してもらえると、より住みやすいという意見もありました。

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ほぼ一棟まるごと空いている旧警察官舎

◯ボランティアへの関心が高い県大生

 見学に協力してくれたお礼と意見交換を兼ねて、最後は地元のお好み焼き屋に行きました。

 そもそも県大生は、都会に行きたい人が来ているわけではなく、農山村の地域づくりや介護福祉などに興味関心を持つ人が集まっています。運動系、文化系、ボランティア系というサークルのジャンルが確立するくらい、地域の手伝いやボランティア活動にも積極的なんだそうです。

 参加してくれた4人も田川の神幸祭でみこしを担いだり、行政のアンケート調査のボランティアなどを経験していました。もちろん、貴重な経験を積むために協力しているのであって、単なる作業やアルバイトには興味は低いそうです。4人とも別途、家庭教師や飲食店のアルバイトなどをしていてかなり多忙の様子。学業の時間、収入を得る時間、経験を得る時間をきちんと管理している印象を受けました。

添田町への居住についても、家賃が安ければバイトを減らせて学業や地域活動が増やせるという意見がさらりと出るあたりに正直驚きました。自分が学生のときは、バイトでもっと稼いで遊ぶことしか考えていなかったはず。最近の学生はずいぶんしっかりしています。

 居住の告知時期や場所についても、合格発表時では遅すぎるので、博多や広島で入学試験会場で寮があることを告知した方がいい、後期日程の人は住宅の選択肢がないので残しておいてほしい、車を持つのは2年生のころなので3年生から受け入れた方がいい、などとこちらが質問せずとも勝手に話が広がります。案内役をしていただいた行政職員も「うちの若手職員でもこんなに活発に意見は出ないかも」と学生たちの熱心さに驚いていました。

 添田町にとっても住宅を空いたまま放置するよりは、使ってもらった方が助かります。若い学生が増えて、地域にも顔に出してくれれば活気も出ます。「男子寮にするなら、もう少し改修も必要ですね。可能性については県大学にも相談してみましょう」と担当者も乗り気でした。次の展開につなげることができ、学生にとっても添田町にとっても意義のある見学会になったのではないかと思います。添田町に県大学の学生寮ができる日も遠くないかもしれません。